インド映画「Street Dancer 3D」(2020) #2

(2020年/インド/ヒンディー語)

  • 監督:レモ・デスーザ
  • 脚本:トゥシャル・ヒラナンダニ
  • 出演:ヴァルン・ダワン、シュラッダー・カプール、プラブ・デーヴァ、ノラ・ファテヒ
  • 制作会社:T-Series、Remo D’Souza Entertainment

#予告編

あらすじ

(左)ヴァルン率いるインド系“ストリート・ダンサー” (右)シュラッダー率いるパキスタン系“ルール・ブレイカーズ”

舞台はロンドン。祖国離れてロンドンで生まれ育ったインド人のサヘージ(ヴァルン・ダワン)は、兄のインデル(プニト・パタク)や他の仲間たちと共に“ストリート・ダンサー”というチームで、ダンスを踊っている。イナヤット(シュラッダー・カプール)が率いるパキスタン人から成るチーム“ルール・ブレイカーズ”とはライバル関係で、ダンスのみならずクリケットの試合観戦でもバトルを繰り広げる日々。

サヘージの尊敬する兄インデルは、世界一のダンサーを決めるダンス大会「グラウンド・ゼロ」に出場するも、ダンスでの大ジャンプの着地に失敗し、グラウンド・ゼロ敗退に加え、膝を負傷しダンスを踊れなくなってしまう。兄の代わりに夢を叶えるためにグラウンド・ゼロへの出場を決めるサヘージだが、ある日彼の元に警察がやってきて・・・。

サヘージは、ライバルチーム“ルールブレイカーズや、ロンドンのチーム“ロイヤルズとの戦いの中で、自分のルーツについて向き合うこととなる。

ダンス映画「ABCD」シリーズの三作目

Street Dance 3D」は、2013年「ABCD: Any Body Can Dance」、2015年「ABCD 2」に続く、フィルム・フランチャイズ作品の三作品目になります。インド映画あるあるで続編と言っても、ストーリーなどは連続していないので、もちろん単作で観ても楽しめる作品になっています。当初は本作品も「ABCD3」のタイトルで製作が進められていましたが、「ABCD2」の製作に入っていたウォルト・ディズニー・ピクチャーズが製作陣から抜けることになり、タイトルを変更する経緯に至ったようです。

「Street Dancer」のキャスト

タイトルは変更となったものの、製作チームやキャストの多くは前作から続投しています。

監督レモ・デスーザ(Remo D’Souza)は有名なコレオグラファーで、一作目「ABCD」から三作連続で本作品も監督しました。同じくインドのダンスの神様プラブ・デーヴァ(Prabhu Deva)も三作品連続での出演です。プラブ・デーヴァは監督業も行っており、最近ではサルマン・カーン主演シリーズ作「Dabangg 3」の監督を務めています。

主演の2人、ヴァルン・ダワン(Varun Dhawan)、シュラッダー・カプール(Shraddah Kapoor)は「ABCD2」からの続投で本作でも主演を飾っています。

主演2人の周りを固めるキャストたちは、役者ではなくダンサーばかりです。現在も放映されているTVリアリティショー「Dance India Dance」というダンスコンペティション番組から出てきたダンサーたちが中心で、ABCDシリーズの要とも言える彼らは、一作目の「ABCD」から三作品連続で出演しています。

本作品でシリーズ初登場そして素晴らしいダンスパフォーマンスを披露したノラ・ファテヒ(Nora Fatehi)は、モロッコ系カナダ人の女優です。今作まではアイテム・ガールとしてダンスシーンへの出演が多く、ここまでメインキャストとして出演するのは初めてになります。今後は、本作の主演を務めるシュラッダー・カプールのシリーズ作品「Baaghi 3」への出演が控えています。

シリーズ初出演のノラ・ファテヒ

本作のヴァルン演じるサーヘジのルック

今作の主演ヴァルン・ダワン演じるサヘージのルックについて、本人がInstagramにてこんなことを投稿していました。

今回のヴァルン演じるサヘージのルックは、インドの有名Youtuberダニーシュ・ゼヘン(Danish Zehen)からインスパイアを受けて作り上げたようです。インドで有名なYoutuberダニーシュ・ゼヘンは、201812月に交通事故にあい22歳という若さで命を落としてしまいました。彼のYoutubeには250万人近くのフォロワーがおり、彼の訃報にファンを始め、多くのスターたちも悲しみました。若くして命を落とした彼の才能と彼の未来に対してリスペクトを込めて、ヴァルン演じるサヘージが生まれました。

https://www.instagram.com/p/B68K94whYxu/

感想:インドの本気のエンタメ映画でした!

ダンス映画の枠からはみ出た三作目。

ABCDシリーズは、インドのトップダンサーたちの神がかったダンスパフォーマンスを観ることが出来るだけで楽しめる作品なのですが、一作目・二作目を経て今作は、ダンスだけでなく、インドとパキスタンというそれぞれのバックボーンを持つ若者たちがロンドンを舞台にして自国というものをもう一度考え直すというとても考えさせる映画でした。

ダンスクオリティの高さと俳優たちの本気

主演のヴァルン・ダワン、シュラッダ・カプールは、かなり鍛えてきました。ヴァルンのシックスパックなにあれ、もうヴァルン史上最高の体じゃない?!

トップダンサーたちに囲まれている中で、前作以上のダンスパフォーマンスを披露し、それは圧巻の一言でした。ヴァルンも、シュラッダも第一線で活躍する役者であり、お芝居も素晴らしいのに、そこだけに留まらず、今作でもボディダブルを使わずに自分の体で表現する役者魂が本当に素晴らしいです。

自分の限界を決めないで、高みを目指して、過去の自分を超えていくってこと。自分はもうキャリアもあるし稼いでいるし、これくらいでいいんだ、って思わないんだよね、本当のトップの人たちって。きっと一流だからこそ、そうやって止まらないで、どんどん挑戦していくっていうインド映画(というかインドっていう国が、なんだろうな)のパワーを魅せつけられたし、本当に胸が熱くなった。大好きだったけどヴァルンのこともっと好きになった!

本当に私は、そういう彼らの姿を見て見習わないといけないなと思いました。

https://www.instagram.com/p/B7Xfg4dB3P8/

また今作で初登場したノラも素晴らしかったです。私は今まで彼女のことノーマークだったので、こんなに素晴らしいパフォーマンスをする人がいたんだ、と驚きました。そしてまたもや外国籍の彼女なのですが、やはりインドで育ったインド人俳優とは違う良さがありますね。ジャクリーンやナルギスなどを見ていてもいつも思うけど、インドらしさやインドの常識にとらわれずに育ってきているから、はみ出ている感じが、新たなパワーをインド映画に足してくれてますよね。

ABCD2からの楽しみ。プラブ・デーヴァもチームにジョイン!

また今作を見てめちゃワクワクしたのが、プラデーヴァがチームにジョインして一緒にダンスしてたところ!前作ABCD2ではコーチという立場だったので、なかなかチームの中で一緒に踊るっていうのはなかったのですが、今作ではちゃっかりパキスタンチームにジョイン!最高でしたね。

過去作品とのストーリーのつながりはない今作でしたが、セミファイナルのダンスシーンではABCD2のオマージュっぽいファンが楽しめるポイントが音楽、振り付けなどに演出されていました。

実在のボランティア団体を基にしたストーリー

作品の中で、ホームレスの人たちを助けるというストーリーがありました。これは、実際にイギリスで活動しているNishkam SWATというホームレスを助けるボランティア団体の話がベースになっているようです。SWATの正式名称は、「Sikh Welfare and Awareness Team」。作中でもヴァルン演じるがサヘージがロンドンへ連れてくるのは、シィク教の聖地パンジャーブ州のアムリトサルからシィク教の人たちで、彼らが泣く泣くターバンを外し散髪されるシーンが痛々しく描かれていました。

BBCにて取り上げられていましたので、気になる方はぜひ!>> A different kind of S.W.A.T team

まとめ

● これぞ、インドの本気のエンタメ作品!

● 誰でも楽しめるストーリーとダンスパフォーマンス!

ダンスを本業とするインドのトップダンサーたちのみならず、インドのスター俳優の本気が現れた本作品。

いろいろな要素(インド、パキスタンの問題/違法入国ホームレスの問題/イナヤトのムスリム家庭のダンス問題/主演三人の三角関係/ダンスバトルグラウンドゼロへ向けてのチーム問題)があり、盛り込み過ぎ展開多めのストーリーだが、ダンスクオリティの高さと魅力的なキャストたちでラストシーンまで持っていく力強さがあり、最後まで気持ちよく見ることが出来ました。

これぞ、本気のエンタメ作品だと思います。おすすめです。

● 作中では使われなかった「♪ Hindusutani」1月26日の共和国記念日お祝いソングです。

おまけ

2020124日の公開日前日に行われたスクリーニングイベントに、主演の2人ははそれぞれのパートナーと共に出席したようです。(Yahooニュース より)

ヴァルンは、幼馴染のナターシャ・ダラルと。二人は、結婚まで秒読みです。シュラッダーは、交際中のフォトグラファー ロハン・シュレスタと。シュラッダーは、まだ仕事を頑張りたいみたいです。

こうやってオフィシャルに、パートナーを連れてこれるというのが素敵ですよね。二人とも、幸せになってほしいです。